油によるIII度熱傷
1歳女子
画像が衝撃的ですので医療関係者やIII度熱傷で移植が必要と言われた方以外、閲覧ご注意ください。
20ヶ月目目
ここまで治った熱傷の経過です。
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テーブルの上に置いた天ぷら油入れを倒し、天ぷら油をかぶって受傷した。
救急車にて搬送された病院形成外科にて腕の熱傷はIII度のため植皮が必要と説明された。
翌日、発熱し、かかりつけの小児科診療所を受診し、両親がネットで調べた湿潤療法について相談され、当院を紹介、翌日受診した。
初診時(受傷3日目)
流水で洗浄し、大人用紙おむつを吸収体としたプラスモイストトップで被覆した
翌日
20ヶ月目目
瘢痕はここまできれいになった。触った感じも柔らかく瘢痕という感じではない。
『熱傷診療ガイド』などによるとIII度熱傷(DB)では植皮術が必須であり、深達性II度熱傷(DDB)でも瘢痕拘縮となり、さらには瘢痕癌になることもあることから、植皮の適応になることが多いと述べられている。しかしながら、熱傷の深達度の診断は困難であるため、受傷後2週間をエンドポイントとし、上皮化が得られない場合は植皮術の適応になるとされている。
そもそも、深達性II度(DDB)以上の深い熱傷では、受傷後2週間では上皮化は進行途上であり完了していなくて当然である。したがって、従来の治療法では、これらの深い熱傷は基本的に全て植皮となる。一方、正しく湿潤療法で治療した場合、むしろ2週間を超えてから上皮化が進む。上皮化すれば植皮術は不要となるので、III度熱傷(DB)こそ、正しく湿潤療法で治療すべきという理由がここにある。
お子さんがやけどをされて「皮膚移植が必要」と説明された場合場合
http://www.wound-treatment.jp/
ここから「熱傷を湿潤療法で治療している医師」
に連絡を取って指示を受けることを強く勧めます。
移植手術を受けてしまうと取り返しがつきません。
低温熱傷
アンカ等による低温熱傷は深部まで損傷が及び、治療に時間がかかり、あとも残りやすいです。火傷しないことが一番です。
【症例】
9歳女児。
年末に湯たんぽで右前脛部を受傷。翌日水疱出現したため病院を救急受診し、グルコン酸クロルヘキシジンで消毒しゲンタマイシン軟膏を処方された。
正月明けに病院皮膚科を受診し、スルファジアジン銀クリームを処方され、家での処置を指示された。1週間に一度受診し、デブリードマン施行されていた。
早く治すには、入院して全身麻酔の上、植皮が必要と説明されていた。
感冒で受診した際に相談され、湿潤療法を開始した。
初診時(受傷25日目)
スルファジアジン銀クリームを洗い流した状態。創の周りに発赤があり、痛みも訴えていたため、化膿していると判断し経口抗生剤を投与した。
何も塗らずにプラスモイスト(R)を貼付し、1日2回流水で洗浄し、張り替えてもらった。
湿潤療法開始3日目(受傷3日目)
痛みは消失し、普通に入浴できるようになった。
湿潤療法開始6日目
プラスモイスト(R)を貼付した上にドレッシングテープを貼ってスイミングに参加した。
湿潤療法開始18日目
湿潤療法開始34日目
湿潤療法開始56日目
上皮化に1−2ヶ月を要した。
その間、感染もなく、痛みもなく、入浴運動等日常生活に差し障ることは一切なかった。
湿潤療法開始10ヶ月目
やけどをされた場合
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ここから「熱傷を湿潤療法で治療している医師」
に連絡を取って指示を受けることを強く勧めます。
移植が必要と診断されたIII度熱傷
1歳男児。アイロンが倒れ左手を受傷した。かかりつけ小児科を受診し、病院形成外科を紹介され、消毒しスルファジアジン銀クリーム塗布。5日目にIII度熱傷のため植皮しなければ治らないと言われ、ネットで検索し、当院受診した。祖父母の家から通院し治療した。
当初より手術の必要性、時期を手の外科専門医に相談していた。
なお、全身診察するも外傷はなく、帰京後も近医に様子観察を依頼している。
非常に衝撃的な写真ですので医療関係者及びIII度熱傷で移植が必要と言われ、ここにたどり着い方以外ご覧にならないほうがいいかもしれません。
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初診時(受傷3日目)
流水で洗浄後、ワセリンを塗布したモイスキンパッドでミトン状に被覆した。
家庭でも同様な処置を1日2−4回してもらった。
指腹に発赤、腫脹認め化膿と判断しCFDNを投与した。
受傷5日目
感染兆候(発赤・疼痛・熱感・腫脹)なく抗生剤中止した。
ステロイドの外用も上皮化を遅らせると判断しこの時点では使用していない。
受傷13日目
イクラ状に過剰肉芽が形成されたので、IV群のステロイド軟膏を使用した。
受傷67日目
MP関節の可動性は良好、PIP関節は自分では曲げないが、睡眠中父がマッサージのように曲げてあげていた。
手の外科に相談したが、もうしばらく瘢痕が安定するまで待とうというアドバイスを頂いた。
受傷10ヶ月後
10ヶ月後に受診され、このように指も動くようになり、ご両親とも大変喜んでおられた。
この時点で手の外科に紹介し、指間形成術を施行してもらった。
「早期運動のおかげで手背の皮膚が十分に伸長され良いフラップになりました」との返事を頂いた。
受傷2年後
「ここまで治りました」とわざわざ見せに来られました
実際は写真で見るより傷は目立たないです。本当に皮膚移植をせずに良かった仰っていました。
2週間しても上皮化しない場合でも正しく湿潤療法を行えば【少なくとも創を閉鎖するための】皮膚移植は不要です。
やけどをされた場合
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炊飯器の蒸気でやけど
10ヵ月男児 炊飯器の蒸気に手をかざして受傷。病院救急受診し、消毒してアズノール軟膏塗布。翌日、かかりつけの当院を受診した。
初診時(受傷翌日)
水疱膜を除去の上、ワセリンを塗布したプラスモイストをミトン状に包むように被覆した。
受傷3日目
見た目は痛々しそうだが、流水で洗浄しても泣かない。
ジクジクしているが、感染兆候(発赤疼痛熱感腫脹)はない。
もちろん、消毒など不要である。
受傷15日目
完全に上皮化した。
瘢痕拘縮も伸展障害も指の癒着もない。
関節部はこのように動かしながら上皮化させるようにすると可動性が保たれた上皮ができる。
やけどをされた場合
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大人の足背熱傷
42歳女性
ソーメンの茹で汁をこぼして受傷
病院形成外科受診し、ヒビテン消毒、アズノール塗布ガーゼ貼付、 2週間して治らなければ移植しなければならないと説明された。アズノールを処方され受傷5日目の再診を指示されていた。受傷3日目に知人の勧めで当院を受診し湿潤療法開始した。
初診時(受傷3日目)
アズノールを流したあと
痛みが強かったので生理食塩水で洗浄し、ワセリンを塗布したプラスモイストトップ(大人用紙おむつに貼付したもの)で被覆。セフェム系経口抗生剤を投与した。
受傷5日目
自宅で1日2回生理食塩水で洗浄しワセリンを塗布したプラスモイストトップ(大人用紙おむつに貼付したもの)で被覆してもらった。
創部全体に痛みが強く、感染が悪化した可能性が否定できず、新キノロン剤に変更した。
受傷7日目
自宅で同様に湿潤療法施行し、痛みはやや軽快してきた。
受傷11日目
ほぼ上皮化し、痛みも全くなくなった。ワセリン塗布せずプラスモイストトップ(不織布ガーゼで裏打ちしたもの)で被覆してもらった。
受傷23日目
完全に上皮化した。瘢痕、拘縮なく、ツッパリ感も全くない。
日焼に注意するように説明し、治療完了とした。
この例のように少なくともお湯で受傷した熱傷は湿潤療法で綺麗に治ります。
皮膚科や形成外科など従来熱傷を治療されている先生がおこなう保存的治療とはイソジン、ヒビテン等の消毒薬を使用して、ゲーベンクリーム、アズノーツ軟膏、アクトシン、ブロメライン等を塗布し、ガーゼで覆われます。
これらの外用薬は非常に痛いですし、殆どの場合傷を深くして、2週間しても上皮化せず、皮膚移植という話になることがしばしばです。
熱傷をされた場合
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に連絡を取って指示を受けることを強く勧めます。